【ラノベ感想】ぼくたちのリメイク 3巻

眩しすぎる才能は無自覚に他人の才能を殺すという話
 
 
ぼくたちのリメイク3巻読了。
以下ネタバレしかないので未読の人はご注意ください。
 
ぼくたちのリメイク3 共通ルート終了のお知らせ (MF文庫J)

ぼくたちのリメイク3 共通ルート終了のお知らせ (MF文庫J)

 

 

 
 
 
 
 
 
ストーリー
 2巻の最後で貫之から「家の問題」を打ち明けられた恭也。貫之の退学を回避するため、恭也はチーム・きたやまのメンバーで同人ゲーム制作を開始する。
シナリオ:貫之、原画:シノアキ、主題歌・音楽:ナナコ、ディレクター:恭也という各々の得意分野を担当し、さらには1・2巻でコネのできた先輩・友人をフル活用することでゲームは無事完成。評判もよく貫之の学生生活を工面するだけの利益を出すこともできたが、貫之は以下の言葉を残して大学を去ってしまう。
 
「超えられない壁ってやつだよ。何をどうしても、こいつの思考には追いつけない。(中略)救われたと思うのと同時に、俺はどうしようもない敗北感と絶望を味わっていたんだ。」(238-239頁)
 
憧れのクリエイターを殺してしまったことに動転する恭也。気づくと2017年、そこには恭也と結婚したシノアキと娘がいた。
 
あらすじはこんな感じだけど、この巻のテーマと言うと1行目になるかなと。
 
おそらくトゥルーエンドを迎えるためにはシナリオ部分をギリギリまで貫之にまかせるという選択が必要だったのだと思う。1巻・2巻でもトラブルに対して「ゲーム会社勤務」という恭也の経験はプラスに働いていたが、3巻ではまさにゲーム製作ということで、恭也の手腕が惜しみなく発揮される。
 
 
問題はその手腕が発揮され過ぎてしまったことにあるだろう。
 
 
ただし、この3巻を普通に読むと(周りのキャラクターが恭也の能力を受け入れているためか)1巻・2巻のような恭也の「万能感・有能感」は感じにくくなっている。
しかし、注意深く読むと恭也は相当にレベルの高いやり取りでディレクションをとっている。 時間がない中で人に物を頼むとき「現状を正しく認識してもらう」ことができれば十分及第点だと思うが、恭也はクリエイターのモチベーションを考慮して、嘘じゃないギリギリのラインの言葉をチョイスしている。
 
ゲーム会社の社員としてプロのクリエイターと接するならこれがベストなやり取りなのだろう。しかし、今回相手にしているのはプロではなく、情熱にあふれてはいるが、自分の才能の扱い方に不慣れな若者たちだ。恭也の能力はどうしても大きく写ってしまう。
 
その影響を最も受けてしまうのがシナリオ担当でかつ問題の渦中にいた貫之なのは自然なことだろう。
現実でも、優秀で現状を正しく認識できる人が自分と相手の実力差に絶望して道半ばで諦めてしまうのはよくある話だ。
 
 
これ本当にもったいないんだよなー。
本人にとっては傷にしかならないし、素晴らしい才能が世に出ないことになるので得する人は誰もいない。
しかも、他人を絶望させるほどの才能を持っている人に限って無自覚なことも多い(もちろん自覚しているからと言ってどうこうできる問題ではないが)。。。
 
 
サブタイと主人公・作者のバックグラウンドから、こういうメタ的な展開になるのはある程度予測はできたけど、タイムリープ前より未来にいくとは思わなかった。
とにかく4巻に期待!
 
 
P.S.シノアキと結婚できて娘までいるなら、僕ならそのルートで確定させるだろうな笑